鍼灸師について
鍼灸師とは・
資格
鍼灸師とは
国家資格のはり師・きゅう師を有する東洋医学の専門家です。
鍼灸師は、「はり師」「きゅう師」双方の国家資格を取得した人がなることができる職業で、鍼や灸を用いて全身にあるツボに刺激を与え、治療を行います。
そのため、鍼灸師という資格は存在せず、「はり師」と「きゅう師」の国家資格を両方持つ人のことを鍼灸師と呼んでいます。
「はり師」「きゅう師」共にツボを刺激するという概念や、共通の技術が多いことから、両方の資格を取得して働く人がほとんどであると言えます。
【はり師ときゅう師】
①はり師
症状に合わせて適切なツボに鍼を刺して刺激を与え、治療を行う国家資格。
②きゅう師
鍼ではなく、もぐさを燃やしツボを刺激することで治療を行う国家資格。
鍼灸師の仕事内容
鍼や灸を用いて患者さんの問題がある患部やツボに刺激を与え、病気の治癒や予防を目指すのが主な仕事です。
その中で治療する内容や目的により、以下のような分野があります。
- 美容鍼灸
- 顔面のしわやたるみの緩和または改善、リフトアップや豊胸など、美をケアする美容鍼灸。
- 婦人鍼灸
- 不妊症、生理不順、冷え性、更年期障害、悪阻(つわり)など、女性特有の身体の悩みに対して、鍼や灸でツボを刺激して、痛みの緩和、症状の回復に努めます。
- スポーツ鍼灸
- 東洋医学としての鍼灸治療をスポーツの分野の中に取り入れ、ケガの予防やスポーツパフォーマンスのアップ、コンディショニングなどに効果があります。
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- 高齢者鍼灸
- 年齢に伴う機能低下による関節の痛み、倦怠感、認知症、循環器系疾患など、高齢者が抱える身体の悩みに対して、鍼や灸を使い、やさしくケアをおこないます。
関連記事:鍼灸師の仕事内容
鍼灸師の進路・活躍の場
鍼灸師は、話題の美容鍼灸やスポーツトレーナーの他、鍼灸院や介護・医療施設まで幅広く活躍ができます。
- 美容鍼灸・エステサロン
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美容鍼灸を主な仕事としていく方は、エステサロンなどで活躍される方が多いです。
- スポーツトレーナー・フィットネス・スポーツ施設
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スポーツトレーナーになるために必須となる資格は存在しませんが、基礎医学・スポーツ医学・運動生理学・解剖学などの専門的な知識が必要とされるため、鍼灸師の多くが活躍しています。
- 鍼灸院・鍼灸接骨院・治療院
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最も多くの鍼灸師が働いていおり、最も身近な働き先となっています。
- 介護・福祉施設・医療施設
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西洋医学が不得意とする症状や疾患を持つ患者さんに対応できることが多くあるため、病院での鍼灸師の活躍が増えてきています。
- 教育研究・学術研究
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鍼灸が持つ東洋医学としての側面を深堀・研究するため、教育・学術分野での就職もあります。
- 独立開業
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鍼灸師は医師などと同じく「独立開業ができる資格」であり、資格を取得すると個人で接骨院や整骨院を開業する権利が与えられます。
関連記事:鍼灸師の仕事内容
鍼灸師の将来性
自然治癒力を高めて病気を予防する東洋医学への関心はますます高まっており、鍼灸師の活躍の場は広がり続けています。公益財団法人「東洋療法研修試験財団」の統計によると、鍼灸師の資格取得者はここ数年で増加しています。2018年度の累計では、日本の鍼灸師の数はおよそ17万人にも上るそうです。
「人にやさしい医療」である鍼灸は、東洋医学への関心や人々の健康志向の高まりにより、近年ますます注目を集めています。介護・福祉の現場、スポーツの現場、美容や女性特有の症状など、様々な領域で活躍ができるため、鍼灸師は世界中から将来性を期待される職業であるといえます。
関連記事:鍼灸師の現状と将来性
鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師との違い
「鍼灸師」と「あん摩マッサージ指圧師」は、いずれも東洋医学をベースとした施術をおこなう医療系国家資格ですが、その違いは施術内容にあります。
鍼灸師は、はり・きゅうを用いて身体のツボを刺激することで人間本来が持つ自然治癒力を高め、患者さんの身体の不調を改善するのに対して、あん摩マッサージ指圧師は、なでる・押す・揉む・たたくなどの手技を用いて、患者さんの身体の不調を緩和します。
鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師を両方取得するか、鍼灸師のみ取得するかを迷っている方は、自分が治療家として将来どんな施術をしていきたいかで決めると良いでしょう。
関連記事:鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師との違い
はり師・きゅう師になるには
鍼灸師になるには、はり師・きゅう師の資格取得が必要です。
高校・大学を卒業した方は、はり師・きゅう師養成課程 のある専門学校などで受験資格を取得し、国家試験を受験します。 国家試験に合格することで、はり師・きゅう師の資格を取得できます。
専門学校を選ぶ際には、将来どんなはり師・きゅう師になりたいかを考え、自分に合った学びが得られる学校を選ぶようにしましょう。
高校卒業
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日本医専などの 鍼灸系専門学校
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鍼灸学科がある4年制大学または3年短大
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一般短大・一般専門学校・一般大学・社会人
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日本医専などの 鍼灸系専門学校
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鍼灸学科がある 大学
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はり師またはきゅう師の国家試験合格
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はり師またはきゅう師の資格取得
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美容鍼灸サロン・エステサロン・女性向け鍼灸院・スポーツ施設・介護福祉施設への就職または独立開業
関連記事:鍼灸師になるには
女性が活躍できる資格・鍼灸師
鍼灸の需要の高まりとともに鍼灸師の数も増え、女性の社会進出や働き方の多様化が進む中で、女性鍼灸師も増えてきています。
美容鍼灸や婦人鍼灸など、女性鍼灸師が活躍しやすい分野の需要が増えてきていることも要因の一つです。
関連記事:女性が活躍できる資格・鍼灸師
鍼灸師の1日のスケジュール
鍼灸師の1日の過ごし方は、他の資格や仕事と同じく、勤務先や雇用形態によって異なります。
鍼灸院に努めている鍼灸師の場合は、朝から夕方くらいの鍼灸院の営業時間に合わせた勤務が基本となります。 また最近人気で増加してきている美容鍼灸サロンの場合には、夜遅くまで診療をおこなうサロンもあり、シフト制勤務になることが一般的です。
また、スポーツトレーナーとして勤務する鍼灸師は、チームの試合やトレーニングのスケジュールに合わせた形態となります。
関連記事:鍼灸師の1日のスケジュールって?
鍼灸師の給与・年収について
鍼灸師の平均月収は約18万円~30万円、平均年収は350万円~450万円程度と言われています。
年齢による差はあまりなく、経験を重ねて高い技術を身に付けていけば、それに応じて高収入も期待できますが、勤務する場所や働き方によって大きく差があります。鍼灸師の給与は、鍼灸院や整骨院、病院などの医療施設で勤務スタッフとして働いている場合と、鍼灸院を独立開業している場合、おのおのの実力や経験値の差、ボーナスの有無などによって変化します。
治療院や病院などで勤務スタッフとして働く場合の年収は約300~400万円、独立開業した人の中には、年収が、700~1,000万円以上の人もいます。
関連記事:鍼灸師の給与・年収はどのくらい?
鍼灸師になるのは難しい?難易度について
年1回実施される国家試験で1問を1点として総得点150点満点中、90点以上で合格となり、鍼灸師と名乗ることができます。
厚生労働省の発表によると、2019年2月に実施されたはり師ときゅう師の国家試験の合格率は以下の通りです。
<はり師>
受験者数:4,861名
合格者数:3,712名
合格率:76.4%
<きゅう師>
受験者数:4,655名
合格者数:3,656名
合格率:78.5%
受験する年によって合格率は変動しますが、
しっかりと国家試験に準備をすれば、およそ8割程度の人は合格を狙える試験だと言えるでしょう。
関連記事:鍼灸師になるのは難しい?難易度は?
通信教育で鍼灸師の資格は取得できるのか
社会人の方で、働き続けながら勉強することが出来る「通信教育」での取得を望まれる方がいらっしゃいますが、残念ながら「通信教育」では鍼灸師を目指すことはできません。
医療従事職の中でも一部の資格については通信教育で取得することが出来ますが、専門的な知識や技術が必要な医療従事職については、「通信教育」での資格取得は出来ません。鍼灸師になるための「はり師」「きゅう師」の受験資格は、厚生労働省と文部科学省が指定する鍼灸師の養成機関(専門学校や大学)を卒業することで得ることができます。鍼灸師の養成課程は3年以上と定められているため、最短でも3年間、学校に通う必要があります。鍼灸師は「鍼」や「灸」を用いて治療をおこなう医療技術職です。資格取得後に治療院などで実際に鍼灸師として活躍するためにも、学校でしっかりと技術を身につける必要があるためです。
関連記事:鍼灸師には通信教育でなれるの?
鍼灸の効果
WHO(世界保健機関)で鍼灸療法の有効性を認めた病気には、次のものを挙げています。
運動器系疾患 |
肩こり、五十肩、腰痛、頸椎症、変形性膝関節症、腱鞘炎、テニス肘など |
消化器・呼吸器系疾患 |
便秘、下痢、痔疾、慢性胃炎、食欲不振、気管支喘息、鼻炎、感冒、扁桃炎など |
疼痛性疾患 |
頭痛、坐骨神経痛、術後疼痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛など |
循環器系疾患 |
低血圧症に伴う諸症状、冷え性、本態性高血圧症など |
泌尿器&産婦人科系疾患 |
月経異常、更年期障害、逆子、不妊、インポテンス、失禁症など |
感覚器系疾患 |
仮性近視、眼性疲労、メニエール病、耳なり、難聴など |
小児疾患 |
夜尿症、小児神経症、消化不良など |
その他 |
不眠症、肥満、自律神経失調症、片麻痺、顔面神経麻痺、アレルギー疾患など |
心身にやさしい女性のための医療
鍼灸は東洋医学に基づいた自然治癒力の賦活を原理とした伝統医療
女性は男性と異なり、明確なライフサイクル(小児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期)があり、それぞれの特徴に応じたケアが必要です。また女性はいつまでも美しく健康でいたいという願いも強いので、特別なケアが求められています。
東洋医学に基づいた医療は、自然治癒力の賦活を原理とした伝統医療です。 また、はり師・きゅう師は国家資格ですので、患者からの信頼も厚く、深い信頼関係を長期に渡り保つことのできる心身にやさしい医療であり、女性の生涯にわたるQOLの向上を図ります。
心身の内なる健康は、外見の美しさにとって不可欠です。
今話題の美容鍼灸
東洋医学の神秘『美容鍼灸』
美容鍼灸とは、顔、頭部、身体にある美容に効果のある「ツボ」に鍼やお灸の施術をおこない、自然治癒力を高めることによって美顔へと肌の改善をしていく治療です。
リフトアップやアンチエイジングなどの効果が期待できます。
また、美容鍼灸には血液の流れを良くして新陳代謝を活性化させるとともに、内臓機能や自立神経のバランスを整えて、心身ともにリラックスできるため不眠やイライラを抑える効果もあります。
なお、「美容鍼って痛くないの?」という不安があるかと思いますが、
美容鍼に使用している鍼の太さは、だいだい髪の毛とあまり変わらない細さのため、個人差はありますが、痛みは感じにくいと言えます。
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鍼灸の歴史・ルーツ
東洋医学の一つである鍼灸の歴史は古く、古代中国まで遡ります。
古代中国では、竹や石墓などを用いて痛みと取り除いていたと言われています。その後、金属の発明によって現在の鍼灸に原型ができたそうです。中国において厳しい自然の中で、さまざまな病気と闘って得た教訓と、膨大な鍼灸治療による臨床例を集大成して、中国国内で鍼灸医学は長い歴史をかけて継承されてきたのです。現代最古とされる医書『黄帝内径』にも鍼灸治療の発展について記されており、ここから鍼灸の世界が開花していったとも言われています。
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中国鍼灸と日本鍼灸の違い
中国鍼灸と日本鍼灸は、使用する鍼の特色も違えば、その目的や効果もそれぞれ違います。
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中国鍼灸 |
日本鍼灸 |
対応範囲 |
難病、慢性病、不妊症、女性疾患、がん、うつ、痛み、生活習慣病などの一般疾患、体質改善 など |
肩こり、腰痛などの慢性疾患、癒し、リラクゼーション、美容鍼灸 など |
目標の違い |
病気の自覚症状の改善など病気の治療にも目標を置く |
楽になった、気持ち良くなった、キレイになったということなどにも目標を置く |
使用する鍼 |
中国本場の各種の鍼(太い鍼、長い鍼、細い鍼、短い鍼)があるが、日本鍼灸の治療よりは、少し太くて長い鍼が用いられることが多い |
江戸時代に日本の鍼師が考案した「鍼管」を使用するのが特徴的。
細くて柔らかく、太さによって色分けがされていてわかりやすい |
使用する灸 |
モグサを含む漢方配合のお灸 |
モグサのお灸 |
医学における位置づけ |
中国の病院では、中医学の観点から内科や外科と並列で鍼灸科が診療科として設置されており、病気の自覚症状の改善のほか、血液データや画像検査も正常となること(病気を治すことを位置づけしている) |
代替医療とされる場合もあるが、一般的には民間療法のような位置づけ |
鍼の刺し方 |
鍼自体を持ち皮膚に差し込むようにして刺す。
日本鍼の刺し方に比べると、押し込むイメージ |
鍼よりも若干短い管を用いて、その中に鍼を入れてト鍼の頭をトントンと弾くように叩きながら入れていく |
関連記事:中国鍼灸と日本鍼灸の違い
婦人鍼灸とは
生理痛や更年期障害、不妊など女性特有の婦人科疾患に対して行う鍼灸治療のことを婦人鍼灸と言います。
鍼灸治療には副交感神経を活性化させるなどの効果も得られるため、婦人科疾患に対するアプローチとしても利用されます。
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